Max Summer School in Geidai 2025コンサート

このイベントは一般公開です。どなたでも自由にご来場いただけます。
入場は無料ですので、お気軽にお越しください。


会場:東京藝術大学、千住キャパス、第7ホール
日時:2025年8月6日
開場:18:30 開演19:00

1
Da Viunchi’s Robot — A Will Dwelling in Shadow
(ダ・ヴィンチのロボット ~影に宿る意志~)
後藤英
2
Weird H. and A.松村誠一郎
3
"Empathic Machines" for One Pianist's Mind and Disklavier
("イシンデンシン" 一人のピアノ奏者のココロとディスクラビアのための)
由雄正恒
4
Morphing Interfaces北爪裕道
5
referee磯部英彬

Da Viunchi’s Robot — A Will Dwelling in Shadow
(ダ・ヴィンチのロボット ~影に宿る意志~)

後藤英/コンセプト、ディレクション、作曲
田中誠人/テクニカルアドバイザー
ヨウセイキツ/テクニカルアシスタント、パフォーマンス
テイリンサン/テクニカルアシスタント
李瓊宇/テクニカルアシスタント

本作品は、ロボットライド株式会社が開発した外骨格型ロボットスーツ「スケルトニクス」を用い、パフォーミングアート、メディアアート、デジタルミュージックを融合させた新たな舞台表現を創出するものである。スケルトニクスは、装着者の動作をリンク機構によって拡張し、全高2.5~3メートルの巨大な身体を人力で操作できるユニークなロボットであり、その圧倒的な存在感は芸術表現の装置としても有効である。
東京藝術大学後藤研究室では、同ロボットにモーショントラッキングセンサーを装着し、動作をリアルタイムで音や映像に変換する実験を進めてきた。DMXやレーザー演出と組み合わせることで、音・映像・身体の統合的表現を実現し、「機械と人間の融合による身体表現」を追求している。
本作品は、テクノロジーを身体の延長と捉えた芸術表現の実験である。観る者の感覚や認知に作用する未来型パフォーマンスの構築を目指す。

『ダ・ヴィンチのロボット ~影に宿る意志~』

本作品は、ルネサンスの天才レオナルド・ダ・ヴィンチが実際に設計・制作した「ロボット騎士」の歴史的構想を起点とし、現代のテクノロジーと芸術を融合したインスタレーション型音楽劇である。1495年頃、ダ・ヴィンチは中世の騎士の鎧を模した自動機械を滑車とケーブルによって構築し、実際に腕や首、脚部が動く“人間機械”を制作した。
この「ロボット騎士」の思想と非常に類似しているのが、現代日本で開発されたスケルトニクス(Skeletonics)である。スケルトニクスは、ロボットライド社が開発した非電動型の外骨格型拡張スーツであり、使用者の身体の動きをリンク機構によって拡張し、そのまま巨大な身体へと伝達する。驚くべきことに、ダ・ヴィンチのロボットとスケルトニクスはいずれもモーターや電子制御を一切使用せず、「人の力そのもの」を動力とする構造になっている。この構造的類似は、時代を超えて「身体の記憶」がいかに機械と接続されてきたかを象徴している。
本作では、スケルトニクスを装着した演者が、モーショントラッキングを通じて、リアルタイムに音と光を生み出す。演者の動作は、サウンドスケープを生成し、照明(ムービングライト/ディマー)、レーザー、プロジェクターを統合制御しながら、空間全体を「影の劇場」として変容させていく。
影は実体よりも先に動き、記憶を語り、時に観客の影と交差し、共鳴する。本作品は、「光と影、記憶と身体、機械と芸術が交差する“小さな音楽劇”」として構成され、詩的かつ身体的なメディアアート体験を創出する。

Weird H. and A.

松村誠一郎

Weird H. and A.は演奏者が弾く単音や旋律に添えられる和音(Harmony)や分散和音(Arppegio)が自動的に生成するアルゴリズムと、身体動作を検知するセンサのパラメータがそのアルゴリズムに介入するシステムを用いた身体拡張のライブパフォーマンス作品である。ホームキーボードやシンセサイザーに備わっている伴奏機能/アルペジエーター機能は人間の演奏をサポートするための機能であるが、本作品ではMaxでその機能を拡張して発展させて、さらに身体動作のデータがパラメータのバイアスとなることで、人間ではあり得ない演奏や奇妙なリズムが発生する。システムを従えて演奏するというよりも、人間側が不自由な条件の中で収拾をつけようと試みる場面が即興的に立ち現れる。それはシステムと人間の共創についての問いかけである。

"Empathic Machines" for One Pianist's Mind and Disklavier
("イシンデンシン" 一人のピアノ奏者のココロとディスクラビアのための)

由雄正恒

演奏家が持っている単なる技術的な行為を超えて、身体と精神が一体となった高次領域に達する音楽表現とは?
本作品では、一人のピアニストの脳波をEMOTIV Insightを用いてセンシングし、Max 9にて再構成された演奏情報をDisklavier™に送信し再生(演奏)する。
結果、人手だけではない身体拡張された表現法から奏でられるピアノ音楽が、先の問いの答えとしてなりうるのではないかと妄想している。


演奏者:森 篤史 ( Atsushi MORI )

演奏者略歴:昭和音楽大学短期大学部准教授。
昭和音楽大学音楽学部作曲学科及び大学院を修了、秋田和久氏に師事。
PTNAピアノコンペティションA1級銀賞を受賞(1987年)、ヤマハJOC海外公演にてワルシャワ・フィルと共演(1993年)、学生オーケストラの祭典「Fanfare」を作曲(2002年)。
その他、キーボーディストとしてライブサポートやアレンジ、レコーディングも行い、また、Ableton LiveやLogicを含むDAWを駆使したトラック制作、ポピュラー音楽の楽曲分析とソルフェージュ教材の開発研究に専念。デジタル技術と音楽教育の融合を専門としている。

Morphing Interfaces

北爪裕道

身体動作や自作楽器の演奏を通じて、音響合成・空間音響制御を行う即興的なパフォーマンスです。
自作楽器装置等に取り付けたセンサーやマイクによって取得した信号をMax環境で解析・処理し、音響変容や空間配置、各種エフェクトの制御に活用します。
身体の動きや演奏によって音がリアルタイムに変化する「拡張された演奏体験」を提示することを目的とし、音と動作の関係性を多層的に探ります。

※内容は現時点での構想であり、今後一部調整・変更される可能性があります。

Referee

磯部英彬

レフリー(アウトプッター)は沈黙のままジャッジを下す。音の「判断」がどのように生成され、伝達され、最終的に出力されるのかを探り、小型のロボットがレフリー(アウトプッター)の動作を模倣することにより社会的な「判断(ジャッジ)」という概念を、楽曲と処理系の関係性から問い直すことを目的としている。作品は複数のセクションで構成され、それぞれがパラアウトギターの音の密度、空間方向性、安定性の対比によって展開していく。この楽曲はパラアウトギターと6つの固定されたスピーカー、ロボットアームスピーカー、小型ロボットで構成され、パラアウトギターの各弦の出力は固定された各スピーカーに対応している。ロボットアームスピーカーは奏者が背負い演奏シーケンスに従ってロボットアームの制御を行うことで様々な方向に音を放つ。パラアウトギターは奏者の山田岳氏と開発した、各弦の音を独立した回線で出力する事が可能なギターである。